賃貸オフィスコラム

インフラチェックの盲点 入居後に後悔しない電気容量・通信環境の確認法

はじめに

電気容量が50VA/㎡か75VA/㎡か、OAフロアが100mmか150mmかで、入居後の増設余地と配線自由度は変わります。
契約前に数値を確認すれば、設備不具合や追加工事の見落としを防ぎやすくなります。

1. まず確認すべき結論は「電気容量・OAフロア・通信表記」の3点です

オフィス選定で見落とされやすいのは、面積や賃料の比較を優先し、入居後の業務に直結するインフラ仕様の確認が後回しになることです。
実際、環境の悪いオフィスは環境の良いオフィスに比べて年間1人当たり約100万円多く経済損失が生じると整理されています。
また、法政大学・東急不動産の研究でも、低評価群は高評価群より年間1人当たり約103.9万円(189.2万円-85.3万円)多く損失が生じると示されています。
インフラ確認は、単なる設備確認ではなく、生産性と移転後コストを守る実務です。

2. 電気容量の盲点は「足りるか」ではなく「増やせるか」まで見ることです

公開物件情報を見ると、丸の内ビルディングはコンセント容量75VA/㎡、新丸の内ビルディングも75VA/㎡、大手町パークビルディングは50VA/㎡です。
つまり、同じ大規模ビルでも25VA/㎡の差があります。
さらに、丸の内ビルディングは「増設対応可能」と明記されています。
電気容量は、PC台数だけでなく、会議室増設、複合機、サーバー機器、サイネージ、受付機器などの追加時に効いてきます。
契約前は、現況容量だけでなく、増設可否、分電盤の余力、追加工事の手配条件まで確認すべきです。
表1:公開情報で比較する主要ビルのインフラ仕様

物件名 床面積 電気容量 OAフロア 天井高 床荷重 通信表記 駐車台数
丸の内ビルディング 75VA/㎡ 1,949~2,284㎡ 100mm 2,800mm 500kg/㎡(HDZ 800kg/㎡) 光ファイバ敷設済 487台
新丸の内ビルディング 2,900~3,200㎡ 75VA/㎡ 150mm 2,850mm 500kg/㎡(HDZ 800kg/㎡) 光ファイバ敷設済・高速インターネット利用可 468台
大手町パークビルディング 3,392㎡ 50VA/㎡ 150mm 2,850mm 500kg/㎡(HDZ 1000kg/㎡) ※通信詳細の明示を確認できず 359台

3. 通信環境の盲点は「光回線あり」で確認を終えないことです

通信環境では、「光ファイバ敷設済」と書かれているかどうかが第一段階です。
公開情報では、丸の内ビルディングは「光ファイバ敷設済」、新丸の内ビルディングは「光ファイバ敷設済」「高速インターネットサービス利用可」と明記されています。
一方で、物件によっては公開ページ上で通信仕様の記載が薄い場合があります。
その場合は、回線事業者の選択肢、既設回線の有無、引込工事の要否、開通までの所要日数を貸主・管理会社へ確認する必要があります。
国土交通省の令和7年度調査では、直近1年間のテレワーク実施率は16.8%、雇用型テレワーカー比率は25.2%です。
出社前提の企業でも、会議配信やWeb商談を安定運用できる通信環境は、いまや標準装備として確認すべき条件です。

4. 数字で見ると、インフラ確認は「手間」ではなく「損失回避」です

法政大学・東急不動産の研究では、オフィス環境の評価差がそのまま経済損失差に表れています。
内装・インテリア改善で22.5万円/人・年、デスク周辺の明るさのムラ改善で14.5万円/人・年の経済便益が示されており、設備面の確認不足を後から埋めるコストは小さくありません。
加えて、内閣官房内閣人事局の資料では、オフィス改革時に全体コストの15%程度を諸経費として見込む考え方も示されています。
つまり、入居後に判明する設備不具合や追加配線工事は、初期見積もりを押し上げやすい項目です。
表2:インフラ確認を後回しにした場合の損失・改善効果

指標 数値 何を示すか インフラ確認への示唆
低評価オフィス群の経済損失額 189.2万円/人・年 環境評価が低いオフィスの損失水準 設備確認不足は生産性低下の温床になりうる
高評価オフィス群の経済損失額 85.3万円/人・年 環境評価が高いオフィスの損失水準 差額約103.9万円/人・年の余地がある
内装・インテリア改善の経済便益 22.5万円/人・年 作業効率向上に寄与 電気・配線・レイアウト計画と一体で確認したい
明るさのムラ改善の経済便益 14.5万円/人・年 プレゼンティーズム軽減に寄与 照明・電源配置・席配置を同時に確認すべき
オフィス改革時の諸経費目安 総コストの15%程度 見積もり外の関連費用が発生しやすい 後追い工事を減らすほど予算管理しやすい

5.まとめ

実務では、確認項目を「電気容量」「増設可否」「OAフロア高さ」「光回線の明示」「開館時間・空調運用」に絞ると、抜け漏れを防ぎやすくなります。
物件資料に通信表記があるか、増設可否が書かれているかまで見ておくことが、入居後の「想定外」を減らす最短ルートです。

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【執筆者プロフィール】
株式会社TFC オフィス営業担当
宅地建物取引士  山崎
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