賃貸オフィスコラム
普通借家契約と定期借家契約の違い オフィス選びでの注意点
はじめに
オフィスを借りるときは、賃料や立地だけでなく、「その場所を何年使い続けられるか」も重要です。特に確認したいのが、普通借家契約と定期借家契約の違いです。

大きな違いは、契約期間が終わったときに、同じ条件で続けやすいかどうかです。
更新の考え方が違うため、移転計画、採用計画、内装投資の判断まで変わります。
契約書のタイトルだけを見るのではなく、更新、終了の通知、再契約の扱いまで確認することが大切です。
1.まず押さえたい違いは「更新される前提か、終了する前提か」
普通借家契約は、期間が決まっていても、満了したら当然に終わるとは限りません。
貸主・借主の間で更新しないという通知が適切に行われず、一定の条件を満たすと、これまでと同じ条件で更新されたものとみなされます。
さらに、貸主側が更新しないと言うためには、法律上の「正当な事由」が必要です。
難しい言葉ですが、簡単に言えば、貸主側にきちんとした理由が必要ということです。
一方、定期借家契約は、契約で決めた期間が終われば終了する契約です。
更新はありません。ただし、貸主と借主の双方が合意すれば、あらためて契約を結び直して使い続けることはできます。
ここで大切なのは、「更新」と「再契約」は別だという点です。
更新は今の契約が続く考え方ですが、再契約は新しく契約し直す考え方です。
表1:普通借家契約と定期借家契約の基本比較
| 比較項目 | 普通借家契約 | 定期借家契約 |
|---|---|---|
| 更新 | あり得る | なし |
| 続けて使う方法 | 更新 | 再契約 | 貸主側が終了を求める条件 | 正当な理由が必要 | 期間満了で終了 | 契約方式 | 書面でなくても成立し得る | 書面等による契約が必要 | 事前説明 | 特別な事前説明規定なし | 更新がないことの事前説明が必要 | 1年以上の契約満了通知 | 更新拒絶の通知は満了の1年前〜6か月前が基準 | 終了通知は満了の1年前〜6か月前が必要 |
※普通借家契約の更新ルールは借地借家法26条、貸主側の更新拒絶の要件は28条、定期借家契約の方式・説明・通知は38条に基づきます。
2.普通借家契約は「長く使いたい会社」と相性がよい
本社機能を置く予定がある会社、採用を増やす予定がある会社、内装工事にある程度お金をかける会社では、普通借家契約の安心感は大きな意味を持ちます。
契約期間が終わっても、すぐに出なければならない契約ではないため、中長期で事業計画を立てやすいからです。
特に、内装・通信設備・レイアウト変更などに費用をかける場合は、短期間で移転し直すリスクを抑えやすい点が実務上の強みです。
ただし、普通借家契約でも「絶対にずっと使える」という意味ではありません。
更新の有無や条件変更の通知には時期があり、期間満了の1年前から6か月前までの間に通知が問題になります。
借主側としては、更新時期が近づいたら、賃料条件や面積見直しの話が出る可能性もあるため、契約開始時から満了時期を管理しておくことが必要です。
3.定期借家契約は「期間が読める」が、「継続利用の保証はない」
定期借家契約の分かりやすい特徴は、いつ終わるかが明確なことです。たとえば、3年契約なら3年で終了する前提で計画できます。
建替え予定のある建物や、一定期間だけ事務所を設けたい会社にとっては、この明確さがメリットになります。
短期のプロジェクト拠点、期間限定の営業拠点、試験的な新規出店に近い事務所利用などでは、定期借家契約が選ばれることがあります。
ただし、オフィス利用ではここが大きな注意点です。
定期借家契約は、居住用だけでなく、事務所や店舗などの業務用建物でも使えます。
そして、同じ場所を使い続けたいと思っても、再契約できるかどうかは相手方との合意次第です。
つまり、事業が順調で「この場所を維持したい」と思っても、再契約できなければ移転準備が必要になります。
オフィス選びでは、賃料だけでなく「満了時に出る可能性」をどこまで許容できるかが判断材料になります
4.実務担当者が特に注意したいのは「書面」と「通知時期」
定期借家契約は、口頭で成立させる前提ではなく、書面等による契約が必要です。
さらに貸主は、契約前に「更新がなく、期間満了で終了する契約であること」を記載した書面を交付して説明しなければなりません。
この説明が重要なのは、借主が普通借家契約と同じ感覚で契約してしまうのを防ぐためです。
2022年の制度見直しにより、定期建物賃貸借の契約手続等は電子化にも対応していますが、だからといって説明が不要になるわけではありません。
また、定期借家契約で契約期間が1年以上の場合、貸主は満了の1年前から6か月前までの間に、期間満了で契約が終了することを通知しなければなりません。
この数字は実務上とても重要です。
借主側としては、通知が来る時期を逆算して、移転準備、増床縮小判断、原状回復費用の見積もり、社内周知の準備を進めやすくなります。
総務担当者は、契約書の保管だけでなく、この通知時期を社内カレンダーで管理しておくと実務が安定します。
表2:オフィス選びでの実務判断ポイント
| 判断項目 | 普通借家契約が向く場面 | 定期借家契約が向く場面 | 確認したい数字・条件 |
|---|---|---|---|
| 利用予定年数 | 3年以上の中長期利用 | 1年〜3年程度の期間限定利用 | 契約年数 |
| 内装投資 | 大きめの投資を予定 | できるだけ抑えたい | 回収したい年数 | 人員計画 | 正当な理由が必要 | 期間満了で終了 | 契約方式 | 採用増で継続利用したい | 一時的な拠点で人数変動あり | 採用計画人数 | 移転リスク | できるだけ低くしたい | 期間満了での移転も許容 | 満了時期 | 契約終了前の管理 | 更新時期の確認 | 満了通知と再契約協議が必要 | 1年前〜6か月前の通知管理 | 続けて使う方法 | 更新を前提に考えやすい | 再契約できるか事前確認が必要 | 再契約の相談可否 |
5.オフィス選びでは「賃料」より先に「契約終了の形」を見る
初心者の方ほど、賃料や面積を優先して比較しがちですが、オフィスでは「どう終わる契約か」を先に確認したほうが失敗を防ぎやすくなります。
たとえば、同じ広さ・同じ賃料でも、普通借家契約なら継続利用しやすく、定期借家契約なら満了時の移転リスクがあります。
特に、社員への通勤案内、取引先への住所周知、内装費の回収などを考えると、契約終了の形は経営に与える影響が小さくありません。
そのため、実務担当者は少なくとも3点を確認したいところです。
1つ目は、普通借家か定期借家か。2つ目は、契約年数が何年か。
3つ目は、満了前の通知時期と、再契約の相談余地があるかです。
この3点が分かるだけでも、「長く使う前提で選ぶ物件」なのか、「期限を区切って使う物件」なのかが見えやすくなります。
まとめ
普通借家契約と定期借家契約の違いは、オフィス選びの安心感を大きく左右します。
普通借家契約は継続利用しやすく、貸主側の更新拒絶には理由が必要です。
定期借家契約は終了時期が明確で、事務所や店舗にも使えますが、更新はなく、続けるには再契約が必要です。
どちらが良いかは一律ではなく、事業計画と使い方によって変わります。
オフィス選びでは、「賃料が安いか」だけでなく、「何年使いたいか」「途中で移転しても困らないか」「内装投資を回収できるか」を契約形態とあわせて考えることが大切です。
経営者・総務担当者にとっては、契約書の種類そのものが、将来の移転リスクを左右する判断材料になります。
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【執筆者プロフィール】
株式会社TFC オフィス営業担当
宅地建物取引士 下田
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