賃貸オフィスコラム
ハイブリッドワークの面積最適化 出社率から算出する「無駄のない坪数」
1. はじめに
ハイブリッドワーク対応のオフィス選びで失敗しやすいのは、「何となく縮小する」ことです。
実際には、縮小余地の有無は感覚ではなく、出社率・在席率・1席当たり面積の3つでかなり明確に整理できます。
国土交通省の令和7年度テレワーク人口実態調査では、全国の雇用型テレワーカー割合は25.2%、直近1年間のテレワーク実施率は16.8%でした。
さらに総務省の令和7年版情報通信白書では、テレワークを導入している企業は47.3%、東京都の令和7年度調査では、従業員30人以上の都内企業の導入率は64.0%です。
つまり、ハイブリッドワークは一時的な例外ではなく、面積設計を見直す前提条件になっています。
2.無駄のない坪数」を決める3つの数字
面積最適化でまず押さえるべき数字は、出社率、在席率、1席当たり面積です。
出社率は「社員のうち何%がその日に出社するか」、在席率は「出社者のうち、同じ時間帯に実際に席を使う人が何%か」を示します。
社内会議、外出、来客対応、休憩などがあるため、出社者全員が常時着席しているわけではありません。
加えて、内閣官房のガイドブックは、1席当たり面積が6㎡/席以下なら「狭い」、出勤率×在席率が70%以下ならデスクシェアが有効、とする実務目安を示しています。
さらに、1人当たり書類量が8箱/人以上なら書類削減も検討対象です。
つまり、坪数を減らす前に、「本当に席が必要なのか」「紙保管が面積を圧迫していないか」を数字で確認する必要があります。
表1:ハイブリッドワーク時代の面積最適化で確認したい基準値
| 指標 | 数値 | 実務上の意味 |
|---|---|---|
| 全国の雇用型テレワーカー割合 | 25.2% | ハイブリッド勤務が一定規模で定着しているかを見る基礎データ |
| 直近1年間のテレワーク実施率 | 16.8% | 「制度はあるが常時ではない」運用を含めた実態把握に使える | テレワーク導入企業割合 | 47.3% | 企業側の制度整備が一般化しているかを確認できる | 都内企業のテレワーク導入率(従業員30人以上) | 64.0% | 首都圏オフィスでは柔軟な出社設計が特に重要 | デスクシェア有効の目安 | 出勤率×在席率 70%以下 | 固定席を減らせるかを判断する基準 | 狭さの目安 | 6㎡/席以下 | これを下回ると過密化リスクが高い | 書類削減検討の目安 | 8箱/人以上 | 倉庫・収納面積の見直し余地を測る |
3.実務で使える「坪数」の計算式
必要坪数は、次の順番で計算すると整理しやすくなります。
必要席数 = 従業員数 × 出社率 × 在席率
必要面積(㎡)= 必要席数 × 1席当たり面積
必要坪数 = 必要面積(㎡)÷ 3.305785
たとえば、従業員100人、在席率85%、1席当たり面積6㎡で試算すると、出社率が変わるだけで必要坪数は大きく変わります。
ここで重要なのは、「社員数100人だから100席必要」と考えないことです。
ハイブリッドワークでは、必要なのは総人数ではなく、同時利用人数に見合った席数です。
会議室、フォンブース、倉庫、受付、リフレッシュスペースなど執務席以外の面積は、この試算とは別枠で加算します。
表2:従業員100人の出社率別・必要坪数の試算例 ※前提:在席率85%、1席当たり面積6㎡、必要席数は小数点切り上げ
| 出社率 | 同時利用率(出社率×在席率) | 必要席数 | 必要面積(㎡) | 必要坪数(坪) |
|---|---|---|---|---|
| 40% | 34.0% | 34席 | 204㎡ | 61.7坪 |
| 60% | 51.0% | 51席 | 306㎡ | 92.6坪 | 70% | 59.5% | 60席 | 360㎡ | 108.9坪 | 80% | 68.0% | 68席 | 408㎡ | 123.4坪 |
4.面積を減らす前に見直すべきなのは「席」だけではない
面積最適化では、執務席だけを削ると失敗しやすくなります。
実際、内閣官房のガイドブックでは、各省庁のオフィス改革事例として、収納量の削減や管理職席の見直しによって席数を増やした例が示されています。
たとえば財務省では収納量が399.5fmから143.2fmへ、文部科学省では511.4fmから312.0fmへ、厚生労働省では515.6fmから263.8fmへ削減されました。
さらに内閣人事局では、書類保管量47%減、複合機の1日当たり出力ページ数44%減という結果が示されています。
つまり、面積最適化の第一歩は、机を詰めることではなく、紙保管・収納・印刷前提の運用を見直すことです。
また、レイアウト変更や縮小移転には付随コストも発生します。
内閣官房のガイドブックでは、全体コストの15%程度を諸経費として見込む考え方が示されています。
坪数を減らして賃料を抑えても、移転・工事・什器再配置・ネットワーク工事を見落とすと、期待したほどの効果が出ないため注意が必要です。
5.物件選定で確認したい「面積最適化」の実務ポイント
物件探しの段階では、単に募集坪数を見るのではなく、第一に、想定出社率に対して会議室や集中席を含めたレイアウトが組めるか、第二に、将来の出社率変動に合わせて増床・減床しやすいか、第三に、紙保管や共用部の使い方まで含めて無駄なく収まるか、を確認すべきです。
特に総務・経営層が押さえたいのは、「今の出社率」だけでなく「繁忙期のピーク出社率」です。
通常月は60%でも、全社会議日や月初・月末に80%近くまで上がる企業は少なくありません。
そのため、平均値だけでなく、ピーク日の同時利用率も把握しておくと、移転後の席不足を防ぎやすくなります。
加えて、東京都では従業員30人以上の企業におけるテレワーク導入率が64.0%まで上昇しており、今後も出社設計が固定化しにくいことを前提に、可変性のあるオフィスを選ぶ視点が重要です。
まとめ
ハイブリッドワークの面積最適化は、「何坪安くできるか」ではなく、「何人が、どの頻度で、同時に席を使うか」を数字で捉えることから始まります。
実務上は、出社率、在席率、1席当たり面積の3つで必要席数を算出し、そこに会議室・集中席・収納・共用部を加える考
え方が基本です。
加えて、内閣官房の目安である「出勤率×在席率70%以下」「6㎡/席以下は狭い」を使えば、縮小余地と過密リスクの両方を判断しやすくなります。
経営者・総務担当者にとって重要なのは、社員数に合わせて借りることではなく、利用実態に合わせて借りることです。
ハイブリッドワーク時代のオフィス選定では、「社員数基準」から「同時利用人数基準」へ発想を切り替えることが、無駄のない坪数と働きやすさの両立につながります。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
【執筆者プロフィール】
株式会社TFC オフィス営業担当
宅地建物取引士 山崎
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━