渋谷街角コラム

はじめに

　「どこを歩いているか見当がつかない」。これが筆者が地元の北海道から上京して間もない頃、初めて渋谷に訪れた時の印象でした。地元では見たことないようなビル群、人混み、そして複雑に入り組んだ道や、駅の構内で混乱し、迷子になってしまったのを今でもよく覚えています。
　そこで今回はなぜ渋谷の道が迷宮のようになっているのか、渋谷の歴史を紐解いていていきながら、調査していきたいと思います。

1.渋谷の地形

　言うまでもありませんが、地名に「谷」がつくことからもわかるように、渋谷は谷です。現在は一部を除いて暗渠(地下に作ったり、上部に覆ったりして外から見えないようにされた水路)となっていますが、新宿御苑あたりを源流に南北から流れる渋谷川が作った谷が渋谷になります。渋谷川は渋谷川国立競技場の西側から原宿を抜けて南下し、宇田川などのいくつかの川が合わさって、渋谷駅の南に顔を出します。

2.江戸時代以前の渋谷

　ここからは渋谷の歴史について解説していきます。
　今から1000年ほど前の平安時代末期に渋谷城が築城されました。この渋谷城は前述の通り川が近くにある地形を活かすことで、天然の水堀を使うことができました。また、現在の八幡通りは鎌倉街道の一つであり、埼玉県や栃木県に道が繋がっていたと言われています。
　室町時代に北条軍によって火を放たれ、渋谷城は焼失してしまい、残念ながら現在は残っていませんが、場内にあった八幡宮は金王八幡宮という名前で現在も残っており、境内には城の石とされる石が一点保存されています。
　また江戸時代では今の国道246号線の前身となる矢倉沢往還が賑わっていました。

3.明治、大正、昭和初期の渋谷

　鎌倉街道の谷地が大きく変更されたのは明治時代です。明治18年(1885年)に今の山手線の前身となる、赤羽から品川間の鉄道が開通され、それにともない渋谷駅が新設されました。当初は今より南に駅がありましたが、大正時代に高架化された際に現在の位置に移動されました。
　そして昭和初期になると、複数の路線が入り組みはじめてきます。昭和2年(1927年)に後の東横線になる東京横浜電鉄が、昭和8年(1933年)に後の京王井の頭線となる帝都電鉄渋谷線が開業。そして後の東京メトロ銀座線となる東京高速鉄道が開業すると。渋谷駅の3階もホームとして使われるようになりました。
　昭和9年(1934年)には後の東急百貨店となる東横百貨店がオープンし、より活気が見られるようになりました。また同年には待ち合わせスポットとして現在でも有名なハチ公像が設置されています。(この時に設置されたハチ公像は戦時中撤去されたため、現在設置されているのは2代目ハチ公像になります。)

4.高度経済成長期以後の渋谷

　現在の渋谷の原型が作られてきたのが、前回の東京オリンピックや、大阪万博前後の高度経済成長期の頃です。
　高度成長期を迎えた渋谷は東急文化会館、東急プラザ渋谷と次々にビルが建ち、東急百貨店も増築され、かつてメインストリームだった矢倉沢往還も六本木通りと合流し、上に首都高速道路が走るようになり、それに伴い稲庭神社が移転されました。
　そして路面電車だった東急玉川線が地下化し、後の田園都市線となる東急新玉川線として開通。その後東京メトロ半蔵門駅と直通、地下3階にホームが作られました。かくして渋谷駅は6つに分断されたのです。
　その後渋谷駅の周辺は高層化して地形を覆い隠し、東横線と東京メトロ副都心線は地下5階(改札口は地下3階)とさらに迷宮化していったのです。

5.まとめ

　渋谷周辺はかつて水源が多く、渋谷城には天然の水堀がありました。
　明治18年に渋谷駅が新設された後、山手線、東横線、京王井の頭線と徐々に複数の路線が入り組み、高度経済成長期には高層ビルが次々と建ち始めて今の渋谷の原型が見られ、迷宮と化しました。

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