新宿街角コラム
再開発だけじゃない!副都心に押し寄せるビル建て替えの波
再開発事業が相次いで行われている、新宿や渋谷、池袋といった東京の副都心エリア。
関東大震災や太平洋戦争からの復興の際に白羽の矢が立ち、世界有数のターミナル駅や繁華街が形成され、高度経済成長期には高層ビルが多数建てられましたが、それから半世紀以上が経過した今、副都心エリアでは建物の老朽化に伴うブランド力の低下や治安の悪化、バリアフリーや地域交流と言った諸課題が露わになり始めてきました。
そのため、区分けされた地域ごとに老朽化した建物群を一掃し、周辺地区一帯の区画整理を行いながら、新しいランドマークを建造したり、道路などの動線を改良したりするような再開発事業が、昨今の副都心エリアでは活況を呈しています。(新宿周辺の課題と再開発計画についてはこちら→再開発相次ぐ新宿駅、計画に見える課題点)
一方、老朽化した建物を建て替える動きというのは、何も再開発計画に限ったものではありません。新宿や渋谷、池袋といった副都心では、老朽化したビルの建て替えが検討されていたり、建て替えを見越した売買が行われていたりといった動きが活発となっています。
今回は、副都心エリアに到来している建物の建て替えの波について解説します。
老朽化物件相次ぐ新宿に押し寄せる建て替え・売買の波
※新宿区 報道発表資料より引用
新宿駅周辺を見ると、特に東口で築40年以上が経過し老朽化したビルが多く、建て替えを促進するための駐車場附置義務緩和や、主要通りの壁面後退、建物の斜線制限の緩和を図る地区計画の変更が行われたことで、新宿通りや靖国通り沿いのビルの建て替えが活発化しています。
新宿通り沿いの、元々は丸井新宿店の1つとして1962年に竣工し、築60年が経過している「新宿東口ビル」。地上8階地下2階建てのこのビルは、入居していた洋服店などのテナントは今年3月末までに退去し、ビル所有者であった芙蓉総合リースは、6月に同ビルをヒューリックへ売却しました(土地の所有権は三井信託銀行が持ちます)。ヒューリックは「新宿318開発計画」として、ビルの建て替えを図る方針です。既に新宿東口ビルに隣接する「しんじゅく一色ビル」は解体工事が行われており、ビルオーナー側は今後の対応を明らかにしていないものの、建て替えを含めどうなるか注目が集まっています。
同じ新宿通りで見ると、アルタに隣接する「新宿アオキビル」は、既にビルの解体工事を終え、10月からは建て替えに向けた本体工事に着手しました。2024年9月頃の竣工を目指し、完成後は地上11階地下1階建てのビルになる見通しです。
一方、靖国通り沿いでは、地上9階地下3階建ての商業ビル「アドホック新宿ビル」を、東京ドームの子会社で競輪場運営などを行う松戸公産が、不動産会社のレーサムへ売却。このビルも1971年竣工の築50年以上の老朽化物件で、新宿サブナード駐車場の出入口と隣接していることから、レーサムでは「ゼネコンなどとの相談のもと、ビルの建て替えを含めた検討を慎重に進める」としています。
レーサムではかねてより、新宿駅東口周辺でビル売買を積極的に行っています。2014年には新宿通り沿いのオリンピックビルを取得、同ビルは2017年にヒューリックへ売却後、2021年5月には12階建ての商業ビルへと建て替えられました。また、2018年にはアニメイト新宿が入居するビルを取得し、同年三越伊勢丹へ売却、アニメイト新宿が別ビルへ移転後、同ビルは1階にコンビニが入居するオフィスビルへと変貌を遂げました。いずれも、テナントの入れ替えや立ち退きを行い資産価値を高めたうえで、開発用地として転売するケースとなっており、アドホック新宿ビルも同じケースになるのではないかと考えられています。
ニトリの旗艦店が出店した池袋・渋谷でもヒューリックの動き
※ニトリ ニュースリリースより引用
ビルの建て替え・改修の動きは、同じく副都心エリアの池袋駅でも相次いでいます。
東口のサンシャイン60通り沿いでは、2020年にサンドラッグの関連企業が池袋GiGOビルをヒューリックから取得、元々アミューズメント施設だった同ビルはその後改修工事を経て、今年4月に地上7階地下2階建ての商業ビルとして開業、1・2階の路面部にはサンドラッグが出店しました。
住友商事は2013年に外資ファンド会社から取得した複合ビル「ロクマルビル」を2020年より建て替え工事に着手し、来年5月の完成を目指し、11階建ての複合ビルにするとしています。また、朝日会館も2021年より建て替え工事に着手、来年11月の完成を目指して建設中です。
2021年10月に閉店した東急ハンズ跡地のビルは、今年ニトリがヒューリックより取得、今月18日にはニトリの新店舗がオープン、この店舗は副都心エリアで最大級の店舗となり、ニトリの旗艦店として注目が集まっています。
一方、渋谷駅では西口のメインストリートの1つである井の頭通り沿いでは、3棟のビルが建設中ですが、このうち2棟はヒューリックがビルを取得後、建て替え工事に着手しているものです。ZARAの向かい側では7階建ての商業ビルが来年10月の完成を目指し、東急ハンズの向かい側では同じく7階建ての商業ビルが2024年1月の完成を目指し、建設工事が行われています。このほかにも、井の頭通り沿いでは来年4月の完成を目指し、地上10階地下1階建てのビルが建設中となっています。
再開発に留まらないビルの建て替え計画が相次ぐ
老朽化した建物が多く、資産価値・ブランド力の低下を危惧する新宿駅周辺では、再開発計画に留まらないビルの建て替えや、それを見据えた売買が積極的に行われています。テナントの移転も含め、景観が大きく変わることにもなり、街の姿が一新されることもあって、兼ねてより発表されてきた再開発計画と相まって、注目されています。
同じ副都心エリアである渋谷や池袋でも、ビルの建て替えが相次いでいます。特に、人が集まる商業エリアでのビルの建て替えや改修が目立っており、こちらも各エリアの新たなランドマークになるのではないかとされており、今後の動向に注目していきたいと思います。
建物の老朽化や資産価値の向上、周辺地区で行われている再開発計画などを見据えた、ビルの建て替え・改修・売買の波が押し寄せています。これから先、副都心エリアの摩天楼の姿が一変することになるかもしれません。
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